剥(む)き出しの骨を 爪でつと掻(か)き裂く
虚(うつ)ろなる病(や)みの 睡(ねむ)り醒(さ)ます様に
抑えられない 欺瞞(ぎまん)の棘(とげ)が
此(こ)の身を刺す 謀(はかり)を 張り巡らして
世に仇(あだ)なすのが悪
其()れを誅(ちょう)するが正義
有事(ゆうじ)には再びその天地が返り
畢竟(ひっきょう)、私は今、悪か
何かを果たし乍(なが)ら
誰かに疎(さげす)まれ
叫びは 返す返す明かりを
探し求めて
望みは 漂(ただよ)うだけ 凍(こご)える
哭(ね)が今 消えゆく 風に千切(ちぎ)れて
無明(むみょう)の睡(ねむ)りに
疲れ 迷い 誰そ彼(たそがれ)る
失意の韜晦(とうかい) 冥(くら)き星を数えて
盞(うき)に浮かぶ花弁
暗い闇に揺蕩(たゆた)う
胸に宿る火の鳥は
何時(いつ)の日か雁(かり)になる
柘榴(ざくろ)に なり果てる 己(おのれ)の頭に
群がる 埋葬虫(しでむし)は 兄の面(つら)をしている
殺(あや)めた数だけ 愛を手に入れると
無間(むけん)の奈落(ならく)も 一躍(いちやく)に跳べると
髑髏(どくろ)に 口付ける 虚栄(きょえい)の猿(ましら)は
そ知らぬ 素振りで 誰が為(ため)に唄う
殺(あや)めた数だけ 穢(あい)に塗(まみ)れていると
無間(むけん)の奈落(ならく)に 真逆(まさか)に呑(の)まれると
嗚呼(ああ) 徒(いたずら)に 一縷(いちる)の陽(ひ)を求めても
嗚呼(ああ) 一向(ひたすら)に
異郷(いきょう)の地に 転(ころ)びて落ちる
渾(すべ)ては
渾ては一族の名を賭して
渾ては
渾ては亡き御父君(おんちちぎみ)の誇りを賭(と)して
犯した不文律(ふぶんりつ)も罪科(つみとが)も
殺(あや)めた命さえも
あなたと新しい時代の
理想郷の為(ため)だというのに
もうよい、黙れ
詭弁(きべん)を弄(ろう)すな 政(まつ)れぬ虎よ
我は今、汝(なんじ)という夢魔(むま)を 燃やす
振(ふ)り仰(あお)いだ 鈍色(にびいろ)の空に
刻(とき)が 夜を 連れてくる
激(ふれぶみ)よと 交わす言葉も
明(あか)る 色を 失ってゆく
もう逃れられぬなら 此処(ここ)で果てるとも
只(ただ)其(そ)れで 此(これ)以上 離れないのなら
抱き寄せて 抱き締めて 抱き留めて もう一度
束(つか)の間の 別離(わかれ)でも 曇(く)らさぬ様に
愛されぬ 相舞(あいま)えぬ 相生(あいお)えぬ もう二度と
惑(まど)う 夢の中(うち)に
彷徨(さまよ)う 声にならぬ嗚咽(おえつ)を 白い雪が嗤(わら)う
抜け抜けと舞いおって 命乞(いのちご)いのつもりか
されど子は別じゃ 後(のち)の憂(うれ)いとなろう
殺してしまえ
何故(なにゆえ)このような惨(むご)い仕打(しう)ちを
己(おの)が命を取られた方が増(ま)しで御座(ござ)います
ああ この子だけはあの人に抱いて欲しかった
お許し下さい もう逢えませぬ
望みは 漂(ただよ)うだけ 傲(おご)れる
嶺(ね)が今 移(うつ)ろうまで
其処(そこ)に降る雨は 躊躇(ためら)うだけ 凍(こご)える
哭(ね)が今 消えゆく 風に千切(ちぎ)れて